ラブホテルでお泊りしたとき、金縛りにあった。
必死で声を出して、隣に寝ている彼女を起こそうとするのだけれど
声がでない。からだの上に誰かがのっかかっている感じで、はぁは
ぁと男の荒い息が顔にかかってくる。すごく生臭い息で、たまらな
くなり、思わず胸の中で念仏をとなえた。
 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……。
 そしたらそのとたん、すっと体が軽くなった。まるでつき物が
おちたみたいに。
 ほっとしたとたん、隣に寝ていた彼女が目を覚ました。
 そしてぼくをみてにっこり笑い、しわがれた老人の声でこういった。
「何が南無阿弥陀仏だ……」